ー施術家のヘルニア体験記ー

忘れもしない2011年7月に、施術家としての私は腰椎椎間板ヘルニアに罹(かか)ってしまいました。その痛みは専門の教科書に載っている通りの症状を私の下半身にもたらしました。

 

実際の痛みは例えるなら、焼き火鉢をジュッと患部に当てられて更には太い注射針をブスっと刺し込まれた痛みの二重奏でした。この痛みは男の私でも思わず涙が出るくらいの激痛でした。まぁ---ホントに耐えがたいつらさとはこのことです。

 

思えば3、4年まえから、お尻が痛かったり股関節の動きが悪かったりと腰痛の兆候は出ていたのです。がしかし、部分的な痛みだったので自分なりの方法で自己施術で良くなっていたこともあり、これを繰り返せば大事にはいたらないだろうと安易に考えていたのです。

ところが、ある時から左足の甲に突っ張るような少し痛みがある違和感があらわれたのです。この症状も痛み部位の筋肉を揉みほぐすことで軽くなったのでひと安心というところでした。

 

それから約1ケ月、朝目が覚めたらいつもとあきらかにちがう違和感があり、腰にズシっと鉛の重しが乗っかっている感じがありました。起き上がった瞬間に腰全体に激痛がはしりました。そして左お尻全体、左太もも側面、ひざ下左側面、足首、足の甲、更には左足親指全体の痛みと感覚異常がこれらの部位に一度に襲いました。とにかく焦りました。ヘルニアであることはすぐに理解できました。でも動けない。どうしよう?手術になるのだろうか。私はこの時点で整形外科でのけん引と電気治療には何の関心もありませんでした。そんなやり方ではこの私の痛みは、遅々として緩和しないだろうと強烈に感じたからです。

 

考えたことは一つ。X線を撮って診断を確定させよう。近くの整形を受診しました。結果は、L4、L5、S1それぞれの間の椎間板にヘルニアが見てとれました。とくにL4とL5の間のヘルニアが出ていました。案の定、治療はけん引と電気療法でした。ガックリでした。ちなみに1回だけ向学のために受けてみましたが思った通りでした。また、急性期のヘルニアの痛みには麻酔も鎮痛剤も効果はないと医者に云われました。それでも痛み止めは処方されましたが。飲んではみましたがやはり全く効きませんでした。その医院には1回こっきりで行くのを止めました。

 

次に考えたのは自分で治す方法です。なかなかいいアイデアは思い浮かびません。しばし思案。でも浮かばない。困った。そうこうするうち頭の中で100Wの電球がぱっとせん光を放ちました。そうだマッケンジーがある。

 

ネットでくまなく検索しました。どこかの病院でマッケンジー療法を指導しているところはないか。なかなかありませんでした。そんな時、宝島社の本がWEB上で目につきました。「革命的療法!マッケンジー体操」これだと直感しました。そのなかに埼玉県伊奈市にある伊奈病院でマッケンジー療法を実施していると書いてありました「干天の慈雨」とはこのことを指すのではないかと思いました。なぜなら、私は埼玉県所沢に住んでいたからです。病院は自宅からナビ検索すると約30Kmのところにありました。激痛のなか幸いなことに車に乗ることはできましたので一心に目的地を目指しました。

 

病院に到着して車を駐車場に入れました。ところが診療科までの距離があるのです。激痛で歩けないなぁ---躊躇しました。いろいろと思案しました。そう言えばカイロカレッジで習ったことがあるなぁとあることを思い出しました。腹圧をかければよいのです。肛門を閉じておもいっきり力めばいいのです。骨盤が安定するのです。私はこの方法で約300メートルほど歩いてようやく診察室までたどり着きました。

 

ひと通りの診察を終えると、いよいよマッケンジーテクニックの指導を受けるのです。役目は理学療法士が担います。やり方をいろいろと教えてもらいました。痛くとも定期的にこのテクニックを実行することがよくなる早道と云われました。また、せっかく痛みがとれても再発する人がいます。これには、はっきりとした理由があってよくなると効果のある体操をやめてしまうのだそうです。そういう人たちが再発しやすいのです。

 

ヘルニアになるということは、その部分が構造的に劣化して強度が落ちていることを意味します。したがって、筋肉をつける運動とマッケンジー体操を日常生活で習慣づけることが非常に大事になってきます。この点の認識の甘さが再発を招くのです。

 

ただし、マッケンジー体操は万能ではありません。しかし、だれでも簡単に習得できてその効果は再現性が高いのです。私は5年間この療法を続けている一人として自信をもってお勧めできます。5年間再発はしていません。でも足のしびれは残念ながらとれてはいません。あの激痛に比べたらなんてことはないと割り切っています。

 

最後にヘルニアがよくなっていくプロセスです。私の場合は30日間痛みになんの変化もありませんでした。途中、疑心暗鬼になりました。このままつづけていいのだろうか?でも手術が嫌なので自分の直感を信じてやりつづけました。31日目でした。朝起きると昨日とは違う。明らかな痛みの変化があったのです。信じてよかった。正直そう思いました。それからは日に日に痛みが引いて行きました。

 

そして、ヘルニアになってから40日目で仕事に復帰できたのです。ある人に云われました。治療家でもヘルニアになるんだね。ウーン---頭では知識はありました。でもそれを言い出したらお医者さんは病気にならないのですか?なりますよ。どんな病気でもなってみてはじめて人の痛みが分かるようになるのです。そういう人が名医になるのです。

 

マッケンジー体操---私は経験から自信をもってお勧めします。